これはちょっとキワモノめいていてこういうものを読みましたと公言し難い代物だがあえて論評したい。世の中に盗撮魔がはびこり、盗撮を標榜する映像作品はいたるところに氾濫している。が、この事実には、性にまつわる主体と客体の関係についての重要な問題が潜んでいる。この書物によれば、盗撮マニアは撮る側、見る側を問わず、ごく普通の「良識的」人間で、その多くは30代から40代までの、会社員、公務員、教師などが多いそうである。要するに偏差値の高くある程度プライドをもった人間が盗撮にはまる傾向が強い。また、日本の性規範は「ヘアー解禁」などの言葉に象徴されるように、性器の隠蔽に心血を注ぐわりに、その他の映像表現・性言説にはモラルもへったくれもなく、女性を性的鑑賞物とする猥雑な表現は野放し状態である。この大矛盾が、盗撮が性風俗として一定のシェアを形成する背景にあって無視できない要素であると。要するに、日本は、ナルシスティックなオナニスト的男で溢れかえっているというわけだ。それが証拠に、西洋諸国では盗撮ものはまるで受けないという。このあたり、ベネディクト流の「恥」の文化、「罪」の文化論を持ち出して説明したくなるところだが、どうか。 本書は、盗撮文化も性風俗の一部を形成するという立場から、盗撮映像にあくまで肯定的な姿勢をしめしており、読む人によっては、盗撮奨励本のように聞こえかねない。極めてプライバシーに関わる盗撮画像が断片的にちりばめられているにも関わらず、この書物が「アダルト」に分類されていないところは、まさに日本である。