パラドールとはスペイン国営の宿泊施設。といっても日本の「健保の宿」とは趣が異なります。古城のような歴史的建造物を保存する目的を兼ねた施設なので、外観、内装ともに豪華なたたずまいを持ち、悠久の歴史の流れを感じることが出来ます。 パラドールは現在スペイン全土に89ヶ所。本書はその内の12を選んだ写真集です。 パラドールに泊まることが大変豪奢な気分を与えてくれるであろうことが実によくわかります。スペインの乾いた空気の、その臭いまでも写し取った写真の数々は大変見事です。 パラドールはそこに泊まることを旅の究極の目的とすることが許される場所といえるでしょう。周辺の町を散策するのも結構ですが、パラドールのテラスで椅子にかけ、眼前に広がる景色を溜息とともに味わうことにただひたすら時間を費やすだけでも一向に構わない、そんな気分にさせてくれそうです。 そんな見事な写真集ですが、欠けていると思わせる部分が残念ながらあります。 パラドールの内側を捉えた写真が主体で、外観についてはないがしろにされています。アンダルシア地方のハエンやカルモナのパラドールの外観写真はサムネイル並みに微小です。歴史的建造物やそれを模した建物がほとんどですから、外観も大変魅力溢れるものであるはずです。編集者の興味がそちらへ向かわなかった理由を計りかねます。 また、宿泊施設である以上はそのお値段に読者の興味がいくのは避けられないはずなのに、本書はその情報を一切提供してくれていません。 下世話なお金の話などしたらせっかくの豪奢な気分に水をさすと編集者が考えたのか、あるいは価格が変動することを見越して敢えて掲載しなかったのか、それは分かりません。ですが、宿泊を推奨するかのように電話とファクスの番号は掲載しているのですから、価格変動の可能性を但し書きしてでも宿泊費の目安を併せて記すべきだったと私は考えます。